Big Joe Williams : Complete Recorded Works In Chronological Order Vol. 1 (1935 - 1941)2005/06/19

1975年の夏、かってBob Dylanが金魚の糞のようにつきまとっていた年老いたブルースマンが来日した。当時、そのブルースマンのアルバムは、シカゴのデルマークというレーベルの出す再発見後の姿が主であった。

ギターのヘッド部分にもう一つ三連のペグ(弦の糸巻き)を取り付けた9弦ギターがトレードマークだったそのブルースマンは、夕方と呼ぶにはまだ日が高い段階で、日比谷の野外音楽堂のステージに登場した。9弦に改造したギターを小さなアンプにつないで、ただひとり椅子に座り、ひずみ気味の音を響かせながら、Highway 49などを歌い始めた。

私はまだ二十歳ソコソコの若造であり、見える姿からその背景を感得する程の知識も経験もなく、ただ珍しいものを見た、という印象しか持たぬ存在であった。

記憶が薄れる今になって、あの日比谷の野外音楽堂で起きた事が、実はとんでもない異世界の出来事だったという事が見えてくる。

この時の録音は、Otis RushとLittle Brother Montgomeryだけは残っているのだが、Big Joe Williamsのものは残されていない。記録テープは存在したのだろうが、流出したという話も聞かない。失われてしまったとしたら、その失われたものは、あの時、その場にいた多くの人の記憶の呼び水でもある。

このアルバムだけではBig Joe Williamsの全貌を捉える事はできないだろうが、いかに卓越したブルーズマンであったかは容易に理解できる。一曲目のLittle Leg Womanは、Honey Boy Edwardsが後年Chessに残した録音で、名コンピュレーションアルバムのタイトルにもなっているDrop Down Mamaの元の姿である。

  1. Little Leg Woman
  2. Somebody's Been Borrowing That Stuff
  3. Providence Help The Poor People
  4. 49 Highway Blues
  5. My Grey Pony
  6. Stepfather Blues
  7. Baby Please Don't Go
  8. Stack O' Dollars
  9. Wild Cow Blues
  10. Worried Man Blues
  11. I Know You Gonna Miss Me
  12. Rootin' Ground Hog
  13. Brother James
  14. I Won't Be In Hard Luck No More
  15. Crawlin' King Snake
  16. I'm Getting Wild About Her
  17. Peach Orchard Mama
  18. Meet Me Around The Corner
  19. Throw A Boogie Woogie
  20. North Wind Blues
  21. Please Don't Go
  22. Highway 49
  23. Someday Baby
  24. Break 'Em On Down